こんにちは。
爽一郎です。
自分のことしか考えない人。
私はそんな人が好きではありません。
とは言え、あからさまに自分のことしか考えない自己中心的な人間は、意外と少ないものです。
そんな人は目立つから印象には残りますが、大多数の人は他人のこともそれなりに考え、適応しています。
しかし、そんな普段は自己中ではない人でも、仕事においては自分のことしか考えられなくなる。
そんな状況に結構出くわすのです。
具体的にどんな人かと言えば
『自分は指示出したから、あとはよろしく』
な人です。
■『無茶を何とかするのが指示された側の仕事だ』
組織で働くと、人と協働することが必要になります。
リーダーとして指示を出したり、誰かに依頼したり。
そんな中における、自分のことしか考えない人として、指示を出した後のことはほったらかし、という人がいます。
私が過去に参加したプロジェクトに、そんなプロジェクトリーダーがいました。
そのプロジェクトはシステム刷新のプロジェクトです。
大きな仕組みだったので、プロジェクトの中で複数のサブチームを作り、各機能を担当して進めていました。
プロジェクトリーダーは意欲的にプロジェクトに取り組み、進めました。
しかし、プロジェクトが佳境に入ると、サブチームのリーダーたちが眉をしかめるような指示を出すことが出てきました。
明らかに多忙で工数が足りないのに、追加で要求をする。
明らかに実現できそうにない機能を、サブチームに依頼する。
いわゆる、できないと明らかに分かる無茶ぶりが増えてきたのです。
サブチームのリーダーたちは、実現が難しい理由をプロジェクトリーダーに伝えました。
しかし、
「それをなんとかするのがサブチームリーダーの仕事だ」
とプロジェクトリーダーは言い放ったのでした。
私はその時、一つのサブチームのリーダーでしたが、
「明らかにできないことを押し付ける。この人、人間の心を失っているな」
と感じたのを覚えています。
チームメンバーたちは工数不足に対して残業で対応しました。
無茶な要望に対して、複雑な制御を考えて対応しました。
複雑な仕組みを作るためにさらに残業が増え、いわゆるデスマーチ的なプロジェクトに近づいて行きました。
制御が複雑になれば、課題も増えます。
それをリリース後に維持することも難しくなるため、運用は複雑になります。
顧客からすればそんな複雑な運用は受け入れがたく、課題は山積みに。
プロジェクトは炎上したのです。
大きなプロジェクトで、顧客からの要望も厳しいものでした。
プロジェクトリーダーとしては、顧客の要望を実現しようと必死で、余裕がなかったのでしょう。
ただ、リーダーは自分が指示を出してメンバーにやらせる、ということしか考えられていないように見えました。
メンバーたちが指示をこなして、ちゃんと成果をあげられるか、という視点を無視していたのです。
これは、自分から仕事が他に移ったらそれ以上は考えない、という点で、自分のことしか考えられない=自己中な状態なのだろうと思います。
■依頼先のことも考えなければ、成果は上がらない
依頼したら、指示したら、そこで自分の仕事は終わりと考えている人がいます。
遅れても、それはあの人が遅れてるから、と言い訳をします。
自分のせいではない、と。
Microsoft創始者であるビル・ゲイツ氏は、仕事を請け負うということに並々ならぬこだわりがあったようです。
ビルゲイツの元でWwindows95を開発した中村聡氏の著書に、こんなエピソードがあります。
『たとえばあるパーティーがあるときに、ビル・ゲイツがあなたに花を用意してほしいと頼んだとします。あなたは花屋に電話をし、パーティー会場に花束を届けるように注文します。しかしパーティー当日、花屋から、雪のせいで配達が遅れるという電話が来ます。あなたは花が遅れるという旨をビル・ゲイツに伝えます。
こういうとき、彼は尋常じゃないほど怒ります。その怒りは、人が変わったのではないかと思うほどです。それだけ締め切りまでに仕事を終えることを重視しているのです。
あなたが命じられた任務はパーティーに花を用意することであり、花屋に注文をすることではありません。注文をするだけなら誰にでもできます。あなたは花を用意するために雇われているのです。であれば、いかなる理由があっても花を用意することができなかったのは100%あなたの怠慢であり、責任を負うべきだというのです。
~中略~
花屋に注文をすることは任務の一部でしかありません。言い訳をする人はそこを勘違いしています。』
これは決して、指示されたんだから指示された人は死に物狂いで成果をだせ、という無茶な考え方ではないように思います。
そうではなく、仕事を請け負ったなら、やり遂げられるように考えて仕事をせよ。
そういう意味なのだと思います。
もし顧客の要望実現が難しかったり条件付きとなったりリスクがあるのであれば、プロジェクトとしてリーダーはそれを顧客に伝えなければなりません。
ですが、一度顧客から要望の実現を請け負ったならば、やり遂げられるようにプロジェクトをリーディングしマネジメントせねばなりません。
プロジェクトリーダーがメンバーに指示を出すのは当然です。
ですが、メンバーが悲鳴を上げているのに成果が出せないことを、メンバーのせいにすることは間違っているのです。
完全に、成果が出ない責任はリーダーにあります。
仕事を誰にどう依頼しようが構わないですが、依頼された側がこなせるか否か。
それを考えられない人は、かなりの数いるように思えます。
仕事をしていて、他のチームへの依頼事項になれば、途端にそのチームの状況や工数は考えずに、やってくれるものと思い込んでしまう。
自分や自分のチームのことは把握していても、他のチームのことは把握していないものです。
知らないことに対して、なぜか楽観的になってしまうように、私には思えるのです。
上で紹介した本の中に、次のような文言があります。
『あなたの仕事は、あなたの仕事を終わらせること』
指示を出して自分のタスクではなくすることが仕事を終えることではありません。
指示先、依頼先がタスクを終えることが我々の仕事を終えることなのです。
成果を出すには、依頼した先の人々が仕事をこなせるのか?には着目せねばなりません。
仕事がこなせなさそうなら、対策を練る必要があります。
自分のせいじゃない、と思っていても、周りからみれば自分のせいになるのです。
ようは、自分のことだけ考えるのではなく、人のことまで考えなければなりません。
例えば、我々が17時に届くように、ピザを注文したとしましょう。
ですが、具材が切れていてピザ屋はピザが作れないことに気が付きました。
具材の供給業者が遅れて、いつもは届くはずの時間に具材が来ていなかったのです。
このままでは17時に、我々に注文のピザが届けられません。
そうなった時、我々は具材の供給業者に文句を言うでしょうか?いや、ピザ屋にクレームを出すことでしょう。
(事情次第では、私は文句を言わない気もしますが、それは置いといて)
ピザ屋は、ピザを17時に届けるのが仕事なのです。
具材を間に合わせることも、ピザ屋の仕事です。
他の店舗から具材を集めるなり、他の具材で代用するなりをピザ屋が考える必要があるのです。
依頼したら終わり、では仕事の成果に責任を持っていないのです。
他のチームにタスクが移っても、仕事を依頼された当人に成果を出す責任は残る。
結局、冒頭のプロジェクトリーダーは、プロジェクトから外されました。
そのプロジェクトリーダーから見れば、彼自身のせいではなく、指示通りに仕事をしないメンバー達が足を引っ張ったように見えたかもしれません。
自分はちゃんと指示していたのに。そう思っていたかもしれません。
ただ、顧客から見ればそんなことは関係ありません。成果しか見ないのですから。
このプロジェクトが遅延している。
課題が山積みになっている。
その事実だけしか見ないのです。
依頼した先が成果を出せるのか?
出せないなら、どうすれば成果が出せるのか?
指示したら、自分の手から離れたら終わり。
そんな、自分の事しか考えない人は、成果を出せないのです。
★終わり★