凡人が成果を出すための習慣

残業ゼロで成果を出すには、どうしましょうか?

小説:ヒーローの管理職 第30話 仕事の管理の章6

マネジメントについての連続小説です。

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 白川は自分がリーダーと言われたとき、心配でたまらなかった。自分のミスがチーム全員に影響する。指揮がまずければ、チームの誰かが命を落とすかもしれない。
 だが、実際の出動時には、今のところは黄原や東條がタスクを是正してくれる。そのため、なんとかやれている。早く2人の是正無しで指揮ができるようになりたいと、白川は思っていた。
 とにかく、白川は東條に教わった指揮の際に意識することを実直に行っていた。
 東條は"仕事の管理"と言っていた。
 ゴールとタスクを設定し、明文化し、必要性と共にメンバーに伝える。
 白川は人への興味があることから、普段から各メンバーとの会話や関わりも多い。そのせいか、メンバーの特性や性格について詳しい。趣味や誕生日なんかも覚えており、東條よりも詳しい情報を持っているかもしれない。
 まだ想定外の出来事への対応は思考が追いつかず、うまくタスクを再設定することが出来ないこともある。だが、人への興味がある性格ゆえか、各メンバーに合わせたタスクの設定が日に日に上達していた。

 そんな中、白川は自らがリーダーをしているCチームに改善すべき点があることに気が付いた。
 Cチームには決定的な攻撃力が足りないのだ。
 しばしば、異能犯罪者の無力化に時間がかかることが多い。安定して無力化はできるのだが、よく長期戦になる。長期戦が多くなると、疲労が蓄積していくことが懸念された。
 攻撃力がない原因は、強力な攻撃に特化したヒーローがいないこと。
 他のチームは、青森の”音速”での攻撃、金城のマグネットマグナム、赤崎の正確無比かつ強力な攻撃で、決定的な一撃を相手にお見舞いできる。
 だが、Cチームのメンバーは平均的には攻撃力があるものの、決定的な一撃が繰り出せない。

 前衛:紫村 摩耶
 守り:黄原 典正
 後衛:白川 有奈(リーダー)

 Cチームのメンバーはこの3名だ。
 白川は銃撃での攻撃が得意だ。だが、身体能力の高い相手や、タフな相手には銃撃だけでは決定的なダメージが与えられない。
 黄原は”鋼鉄化”して殴り掛かると攻撃力は高いのだが、動きがさほど早くないため、素早い相手には当てずらい。
 それを補うのがスピードのある"超身体能力"の紫村なのだが、一撃の攻撃力は高くない。
 白川は、必殺技を考えるべきだと考えた。桃地と編み出した”銃弾テレポート”のように。チームで連携して繰り出せる、強力な威力の必殺技を。

 白川はチームメンバーと相談し、一つの必殺技の案を考えた。
 3方向からの同時攻撃、である。
 白川は、今は2つまでの銃弾を同時にコントロールできる。だが、それは同じ軌道を2つの銃弾に描かせることができる、ということであり、バラバラに2つを高精度でコントロールできるわけではない。ようするに、連続で放った銃弾を2発、狙った場所に同じ軌道で着弾させることはできるが、別々の軌道で、多角的な同時攻撃はできない。
 だが、白川は桃地との"銃弾テレポート"のトレーニングを経て、自分の異能の力がレベルアップした事を実感していた。トレーニングを積めば、2発の銃弾を別の軌道で操ることで、例えばターゲットに左右から同時に銃弾で襲わせることができると考えている。
 2点から攻撃されると、ターゲットは警戒して注意は複数の方角に向けられるだろう。つまり、対峙しているヒーローたちへの注意が疎かになる。
 そこに、紫村のスピードを活かした一撃を加えるのだ。紫村の攻撃力を補うため、鋼鉄化して安定感を増した黄原が、両手を使って紫村の両足を押し出す。紫村からすれば、黄原の両手を踏み台にしてターゲットへ突進する。
 そうして、白川の2点同時攻撃に気を取られるターゲットに、攻撃力を増した紫村のスピードある一撃を当てるのだ。銃撃に気を取られて防御が疎かになっているターゲットには、決定的な一撃となるだろう。
 これが、白川が考えた技、3方向からの同時攻撃である。
 チームメンバーへ相談したところ、みな乗り気になってくれた。

 白川は東條に案を話した。
「確かに、Cチームは前衛の紫村さんがまだ経験が浅いこともあり、攻撃力には課題がありますね。
 良い考えだと思います。その技の開発を実施してみてください。」

 東條からは快諾された。
 そうして、白川はチームメンバーと相談しながら、技の開発を進めた。
 だが、うまく進まない。問題がいろいろ出てきた。
 例えば、それぞれの練習の進捗が分からない。基本的には個人でトレーニングして、3人で合わせてのトレーニング、というプランにしていた。だが、白川はいつ3人でのトレーニングに移行すべきか分からなかった。
 また、黄原も、紫村も、それぞれ個人のトレーニングにおいて問題があるように見えた。もちろん白川にも、である。実際、紫村は何から手を付けるべきか分からず、闇雲に突進のトレーニングをしているように見えた。それが本当に正しいのか、自信が持てないままトレーニングしているのだ。
 問題はあるのだが、それをどう解決して進めればよいのか、分からなかった。
 白川は、技の開発がうまく進められないことを東條に打ち明けた。

 ***

「技の開発、つまりプロジェクトが思うように進められない、ということですね。」
 東條は白川に確認した。
「はい。進め方が分からなくて、どうしたらよいか…」
「分かりました。ゴールを達成するための、管理方法についてお伝えしましょう。」
 東條は、ティーチングの必要性を感じ、プロジェクトの進め方について伝えることにした。
 過去、那須賀から教わった"3.仕事の管理"について思い出す。

 3.仕事の管理
  3-1.適切な業務指示
  3-2.適切な権限委譲
  3-3.ゴール達成のためのコントロール

 その中の”3-3.ゴール達成のためのコントロール”についての話だ。

 ★つづく★