こぶたの三兄弟がいました。
ある日、こぶたの兄弟は母にこう言われました。
「そろそろあなたたちも独り立ちしなさい。自分で家を建てて、独立するのです。
ただ、最近はオオカミが来ることもあるから、ちゃんとした家を作りなさい。」
急な母の言葉に三匹は困惑しました。
が、母親の言葉は絶対、という文化の中で育てられた三匹は、母親の言葉に従い、実家を出て各自の家づくりを開始しました。
***
三男のぶたは、言われたことの事実を確認し、自分なりの最善の結論を考えるぶたです。
三男も次男と同様、母の言葉を思い出し、母へ真意を確認しました。
ちゃんとした家とは、何であるかを。
母はオオカミは鼻が利くので家に隠れても見つかる事、鼻息がとても強く脆い家は吹き飛ばされることを教えてくれました。
ですが、三男のぶたはさらに母に聞きました。
「具体的に、どの程度の強さならオオカミの鼻息に耐えられますか?ワラは吹き飛ばされますか?木では?そのほかの材質では?」
母は言いました。
「そこまでは、私も知らないのよ。」
三男のぶたは、事実を可能な限り確認することにしました。
過去のオオカミの情報を探るべく、オオカミに襲われ無事に逃げおおせた同族たちに話を聞きました。
そこで教わったのは、次のようなことでした。
オオカミはどこに逃げても臭いでかぎつけてくるから、隠れてもだめだとか。
オオカミの鼻息は強くて、ワラなんて吹っ飛んでしまうとか。
オオカミの鼻息で、大きな気が倒れているのを見た、とか。
オオカミが岩の隙間に隠れたぶたを食べようとして、岩を鼻息で吹き飛ばそうとしたが、吹き飛ばせずに諦めた、とか。
三男のぶたは、それらの意見から、ワラよりも木よりも頑丈な、レンガの家を建てることにしました。
それには大変な労力がかかるのですが、命を守るためにはそんなことは言ってられません。
そして、さらに三男のぶたは考えました。
オオカミに襲われたときにどうするかを。
***
三匹のこぶたはそれぞれ、ワラ・木・レンガの家を建てて、自立して暮らし始めました。
その数日後、予想通りオオカミが現れたのです。
オオカミはぶたのにおいをかぎつけ、長男のワラの家に向かってきました。
ワラの家の中にぶたがいると確信するや否や、大きく息を吸い込み、胸を膨らませました。
ワラの家は吹き飛ばされてしまいました。
そうして、長男のぶたは食べられてしまったのです。
オオカミはまだ食べ足りません。
まだ近くにぶたがいる。鼻をひくひくさせ、次は次男のぶたが建てた木の家に向かいました。
先ほどと同じく、木の家からぶたのにおいがすると確認すると、
「ブフゥー」
と木の家も吹き飛ばしてしまいました。
そうして、次男のぶたも食べられてしまいました。
それでもなお、オオカミは食べ足りません。
次のぶたのにおいを探し、レンガの家にたどり着きました。
三男のぶたが建てた家です。
大きく息を吸い、鼻息をレンガの家に吹きかけました。
ですが、レンガの家はびくともしません。
三男のぶたは、窓からオオカミを見ました。
恐れた表情で、ぶたは上を見たのです。
それは、レンガの家の煙突の方向でした。
オオカミはそれを見て、ひらめきました。
このぶたは、俺に煙突から家に入られるのを恐れているんだ、と。
オオカミは煙突へ向かって、レンガの家の外壁を上りました。
そうして、煙突から家に入って行ったのです。
三男のぶたは、煙突の下にある暖炉にぼうぼうと火をくべていました。
オオカミは、煙突のなかから滑り落ち、暖炉の火に焼かれて死んでしまいました。
そう、三男のぶたは、ワザと煙突に誘ったのです。
事前に、煙突からなら入ることができるという経路を設計し、オオカミを焼き討ちにすることで、オオカミという災害を無くすことを計画していたのです。
***
三匹のこぶたは、要件を確認するということについて、それぞれ下記の特性を持っていました。
他のぶたは気の毒ですが、曖昧な指示をした母がオオカミに並ぶ悪党と言えるかもしれませんね。
★終わり★