こんにちは。
爽一郎です。
感情を排して仕事が出来たら、どれほどすばらしい成果が上がるだろうか。
そんなことを考えることは多々あります。
人間は感情で動く生き物なので、モチベーションが仕事の質を上げるということは一定正しい。
ただ、全ての人がモチベーションをもって仕事に向かえるわけではありません。
むしろ、モチベーションが上がる仕事や、やりがいのある仕事にありつける人のほうが少ないものです。
多くは、仕事の一部はやりがいあるという程度でしょう。
もしくは、やりがいなんて無理やり見つけない限りゼロ、という人が大多数ではないかと思っています。
であれば、仕事においてはポジティブな感情が生まれにくいもの。
そんな状況において、感情なんて排して仕事できたらどれほどよいか。
そんなことを考えてしまうのです。
このへん、ロボットは最強だなぁなんて思ってしまうのですが、人間は前述の通り感情で動きます。
感情を排することは夢物語です。
と言うわけで、今日言いたいことは、リーダー的な立場の人であればあるほど、個人的な感情を抑えて成果に目を向けられるか、が重要ということです。
■まわりから「ずるい」と思われたTさん
チームで仕事をしていて良く出てくる感情が、「ずるい」というやつです。
過去、同僚にこんな人がいました。
名前をTさんとしましょう。
私は前職ではITインフラシステムお客さんに提案して構築する仕事をしていました。
Tさんはその時の同僚です。
Tさんは部門や課として実施すべき仕事があったとしても、自分が興味がある分野の仕事しかしない。
それが売り上げに結びつかないとしても、Tさんがエンジニアとして興味がある仕事しかしない。
いわゆる、自分のしたいことしかしない人です。
そのこだわりは徹底的で、評価が下がろうが気にしない。
いわゆる日本企業なので、そうそう首になる会社でもないですし、異動もわがままを突き通せば断ることができる。
だからTさんは強気に我を通していました。
とは言え、彼に良い点もありました。
技術へのこだわりは一級品なので、たまたまTさんが興味のある分野と部門の方針が合致する領域があれば、かなりの戦力になるのです。
しかし、エンジニアあるあるで、人との調整事は苦手なので一切しない。
特定分野でとびぬけた技術力はあるけれど、使いづらい奴。
そんな認識を皆持っていました。
ある時、Tさんにプロジェクト推進が依頼されました。
技術分野として適合していたので、課長がTさんに依頼をした案件でした。
Tさんの職級は技術的なことだけをするようなそれではなく、本来はプロジェクトを回すような仕事もしないといけない職級であるため、課長も成長の意味を込めてアサインしたようです。
ただ…前述の通りTさんは技術に興味があるだけでプロジェクトマネジメントはしようとしません。
顧客へヒアリングして目的確認し、要望を聞いて要件定義し、必要な人員を集める。
そういった、Tさんからすると「めんどうなこと」は一切しません。
Tさんは好き勝手に顧客の意見を想像して技術検証するだけだったのです。
よって、プロジェクトは進まず、炎上しました。
炎上したがゆえ、私含め他のエンジニアが火消しに入ってプロジェクトを進めたのです。
その折にTさんへ周りが持っていた感情は、まさしく「ずるい」なのです。
顧客との調整は面倒なものです。
炎上中は、余計に大変。
だいたい向こうはネガティブな感情をこっちに向けてきますから。
そういった面倒なことは一切せず、Tさんは好きなことだけ黙々と行うのです。
まさしくTさんがしなかったことの「しわ寄せ」を食らっている。
そう感じました。
ただ、プロジェクトの要件や進め方を整理し、炎上がましになったのちには、Tさんはとんでもなく役立ちます。
技術力は高いので、かなりの速さでシステム検証や構築を行ってくれます。
それでも、周りのメンバーは陰口を言いました。
どれだけ役に立とうとも、Tさんは好きなことしかしない。
無理やりにでも、大変な顧客との交渉にひきずりだそう、と。
Tさんにも辛い仕事をしてもらおう、と。
しかし、炎上を鎮火するためにアサインされたプロジェクトマネージャーはこう言いました。
「Tさんに辛い仕事をさせても、お客さんは満足しない。
Tさんにはこのまま、したいことだけしてもらう。
それが一番仕事が進む方法なんだから」
結局、プロジェクトマネージャーはTさんに、終始構築や検証と言った技術的な作業をさせました。
■感情を排して仕事を割り振る方がうまくいく
組織の一員として成果を出す方法。
それは、
『自分には高い要求を、他人には期待しない』
という考え方でいることです。
人材育成として、期待を込めて仕事をまかせる、なんてことはあるかもしれません。
ですが、大半の仕事は『成長してもらうために任せる』ようなものではなく『遂行が必要だから任せる』ものでしょう。
先ほどの例のように、本人にやろうという意思がないのに、無理に顧客との折衝を任せても結果は出ません。
やってくれるだろう、とか、命令すれば実行するだろう、と期待するより、できることをさせるほうが圧倒的にうまく仕事はまわります。
かのドラッカー氏も組織で成果出すためのマネジメントに必要なものとして、こう語っています。
『人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは、費用であり、脅威である。 しかし人は、これらのことのゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。』
出来ないことをさせても成果はでず、人の強みに焦点を当ててできることをさせる。
これが重要なことなのです。
ただ、そうだとしても我々の感情が邪魔をします。
『自分には高い要求を、他人には期待しない』
例えば…
自分はわかりやすく伝えよう。
しかし、人から分かりやすい説明がもらえるとは思うべきでない。
自分は本を読み一生懸命実践してるのに、他の人はやってない。
なんでやらないんだろう。
そんな状況に身を置けば、他人を見下したり、周りの人をずるいと考える感情が出てきます。
冒頭のTさんのように、やりたくない事しかしない人はいます。
そんな人は、組織という安定を教授しつつ、やりたいことだけやろうとするずるい人かもしれません。
ただ、ずるいからと言って無理にできもしない仕事をさせることは、マネジメントとして無能なのです。
ずるいから、できなくてもやらせる。
あの人はどうせやらない、そんなことは分かっているけどやらせる。
そんな感情的な仕事の振り方をしてしまうチームを、私はこれまで見てきました。
ほぼ、仕事はうまくいきません。
感情を排して仕事ができればどれほどよいか…。
いや、そうしなければ、組織で成果を出すマネジメントなどできないのです。
さらに『自分には高い要求を、他人には期待しない』に則して、こう言うこともできます。
自分は感情に左右されない。
だが、人は感情に左右されるので、配慮する。
見下すのではなく、それがビジネスでは最も成功率が高い振舞いなのです。
感情から一線を引いて、より成果を出せるように邁進する。
それを端的に表せば、自分には高い要求を、他人には期待しない。
自分に厳しく、他人には優しく、となるのです。
★終わり★