こんにちは。
爽一郎です。
先日、5歳の娘と近所の公園に行きました。
娘は、公園の端っこに咲いている花を摘んで、
「おはなー きれーい」
と笑って眺めていたのです。
かわいいなぁと私は微笑ましく見ていました。
しかし、次の瞬間に娘が急変しました。
「うわ、虫!」
そう言って、両手で持っていた花を地面に投げうったのです。
それまでの笑顔はなくなり、一挙に真顔。
あまりの変わりっぷりに私も唖然としつつ、無残に地面に落ちた花を見ると、一匹のアリが這っていました。
虫が苦手な娘は、大好きなお花であってもぶん投げてしまったのです。
これを見て、まさに人間にとって嫌なものは好きなものを凌駕すると再認識しました。
ノーベル賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマン氏の著書にはこうあります。
『嫌悪感にくわしい心理学者のポール・ロジンは、サクランボが山盛りになった器にゴキブリが一匹いただけで台無しだが、ゴキブリがいっぱいのバケツにサクランボが一粒混じっても何の感情も引き起こさない、と指摘する。ロジンの言うとおり、いろいろな意味でマイナスはプラスを圧倒するのであって、損失回避も、そうした一般的なマイナスの優位性の一種と言うことができる。
別の研究者の「悪は善より強し」という論文では、「人間は悪い感情、悪い両親、悪い評価を、よい感情、よい両親、よい評価よりもずっとくわしく検討するものである。そして、よい自己規定を求めるよりも熱心に、悪い自己規定を避けようとする。悪い印象や悪いステレオタイプはよい印象やよいステレオタイプより容易に形成され、しかもなかなか取り消されない」と総括している。この論文では夫婦関係にくわしい心理学者として名高いジョン・ゴットマンの指摘を引用しており、それによれば、人間関係を長期的にうまくやっていくためには、よいことを追い求めるよりも悪いことを避けるほうがはるかに大切だという。』
(太字は私によるもの)
人間、プラスのことよりマイナスのことが目につきます。
プラスを得るより、マイナスの回避のほうが、人間の精神衛生にとって重要な要素ということです。
これを仕事に当てはめるなら。
好きなことを仕事にするより、嫌いな仕事をしないことにエネルギーを割く方が幸福になれる、ということ。
人間関係にあてはめるなら。
好きな人と集まるよりも、嫌いな人を避けることにエネルギーを割く方が幸福になれる、ということ。
■辛い時は避けるほうにエネルギーかけるほうが良い
嫌いな仕事も嫌いな人も、バンバン避けていこうぜ!ということが言いたいわけではありません。
現実は厳しいので、我々にそうはさせてくれませんからね。
嫌な仕事だって時にはしないといけないし、嫌な人と仕事することもあるでしょう。
企業で働いているなら、企業勤めという安定を享受するための対価としては、自分の本意とは異なる組織のための業務を要請されることはあります。
そういうものを片っ端から突っぱねると、ただの迷惑な人間になってしまいます。
ただ、第一に何かにエネルギーかけるならば、好きな仕事を追い求めたり、好みの人と仕事することにエネルギーかけるよりは、嫌な仕事や人を避けることにエネルギーかける方が良いよ、ということが言いたいことです。
例えば、
・好きな業務:嫌いな業務:どちらでもない業務
の割合が
・20:30:50
だとしましょう。
好きな業務の割合20を30に増やすより、嫌いな仕事の割合を30から20に減らすほうが良いよ、と言うことです。
人間関係においても同じで、好きな人を増やすよりも嫌いな人との交際を断つほうが幸せになれます。
SNSで不快な人は即ブロック。
SNSで気の合う人を探すよりも、そのほうが断然楽に幸福度を上げられます。
平たく言えば、
『やりたいことをどうやってやるか』
よりも
『やりたくないことにどう対処するか』
に対して脳みそを使う方が健全になれるよ、ということです。
例えば。
営業をするとします。
この商品は価値がない、と自分で思う商品を売るのは苦痛です。
極端に言えば、お年寄りをだまして不要な商品を売りつけるようなものです。
こんな営業は、誰だって嫌なことで、サイコパスしか続けられないものでしょう。
では、嫌な商品を売りたくないから、代わりのものを売るとしましょう。
その際に自分の好きな商品を売るほうが幸せ?
まぁ、それが実現すれば、幸せかもしれません。
が、難易度非常に高いのです。
好きなものが売れるものかどうかは分かりませんからね。
好きなものよりも、世の中に迎合した商品を売るという選択肢(つまりは嫌いなものではないものを売る)の方が、はるかに取りやすい。
嫌なものを避けることは、エネルギーをかける量のわりに、幸福度が上げやすいのです。
好きなことにエネルギーかけるという選択肢以前に、好きな仕事が何であるかなんて分からない人のほうが多いのだと思います。
同様に、気の合う人がどんな人か、どう探すかなんてわからないでしょう。
そんななかで、好きなものごと求めて五里霧中をさまようよりは、嫌なことを極力避ける、やってもストレスを感じないようにする、という選択肢にエネルギーをかけるほうが良い。
それでも余裕があれば、好きなものを求めるぐらいがちょうどよいのだと私は思うのです。
★終わり★