こんにちは。
爽一郎です。
言われたことしかしないという人、いますよね。
そんな人々は、社会においては、結構お荷物的に扱われがちです。
何せ、今企業が求めるもののは主体性ですから。
2018年に経団連が行った調査が下記にまとめられています。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf
『(4) 選考にあたって特に重視した点
「コミュニケーション能力」が第 1 位(16 年連続)、「主体性」が第2位(10
年連続)となった。』
主体的に、自主的に動ける人間を求めているわけです。
指示待ち人間は歓迎されないのでしょう。
言われたことしかしない人となってしまう原因は、複数あります。
考えるという力自体が弱い人。
責任を取りたくないので、自主的な言動はしたくない人。
そこまで熱意がない人(そこそこでいいから手を抜いている)。
指示待ち人間は能力がないとか、能力はあってもさぼっているとか、そういう人々なのだと私は思っていました。
が、その昔、そうではない人がいたことを思い出したのです。
■言われたことしかしなかった友人
昔、友人が私に相談してきたことがあります。
恋愛の相談です。
友人「俺、Aのことが好きなのは知ってるよな?」
私 「うん、前に言ってたもんな。」
友人「どうしたらいいと思う?」
私 「どうしたらって…。どうしたいの?」
友人「そりゃ、そろそろ二人きりでご飯とか行きたいけど…」
私 「じゃあ、誘ったらいいんじゃない?仲良さそうに見えるし。」
友人「だけど、不安でさぁ。お前ならどうするかなと思って。」
私 「不安なら、まずは共通の友達と一緒にご飯行ってから、今度二人で行こうって誘ってみるとか…」
友人「おお、なるほど。そうしよう。」
私 「おいおい。俺は恋愛のスペシャリストでもなんでもないから、うまくいくかは分かんないよ?もっと自分で考えたほうが…」
友人「いや、自分で考えるの不安だし。お前は彼女いるから、きっとお前の方が正しい。」
まぁ、そんなやり取りでした。
友人は頭も良くて考える力もありました。
恋愛を成功させたいという意欲もありました。
しかし、彼は自分では考えず、私に言われたことしかしなかったのです。
(ちなみに、その恋愛は成就しましたが、二人はすぐに別れました…)
その友人は、私の思う「言われたことしかしない人間」の特徴に合致しない、と最近になって思ったのです。
なお、その友人がしきりに不安だと口にしていたことを覚えています。
■人は不安になると周りの行動に頼る
アリゾナ州立大学の心理学教授、ロバート・B・チャルディーニ教授は著書『影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく』の中で語っています。
人に影響を与えるものの一つに、「社会的な証拠」がある、と。
『わたしたちは、ほかの人たちが正しいと考えていることをもとにして、何が正しいかを判断する、ということです。』
多くの人が、周りの大多数のやっている人がやっていることを「正しいこと」と認識し、影響されるということです。
あなたにも身に覚えはあるでしょう。
みんながやっているから、きっと大丈夫だ、という経験が。
そして、チャルディーニ教授はさらに言います。
『社会的な証拠に最も強く影響を受ける人というのは、ある状況になじみがなかったり不安を覚えている人で、その結果、その状況で最も正しい行為の証拠を自分の外に求めてしまう人なのです。』
不安を覚えると、人の行動をうのみにする、という傾向が強くなるというのです。
『影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく』の中では、人々の不安を利用して大きな影響力を使った例として、ジョーンズ・タウンの集団自殺事件を挙げています。
『1977年、集団における、政治的、社会的、精神的なリーダーであり、絶対的な存在でもあった教祖ジム・ジョーンズが、集団とともに南アメリカのガイアナにあるジャングルに入植、その地で人民寺院は、比較的ひっそりと存在していました。ところが1978年11月18日、下院議員レオ・J・ライアン率いる実情調査団がジョーンズタウンから飛行機で帰ろうとしていたとき、そのうちの4人が殺害されたのです。ジョーンズは、自分がこの件に関与していたといって逮捕されれば、人民寺院は終わってしまうと思い、自分のやり方で寺院の後始末をつけられないかと考えました。そこでジョーンズはすべての信者を集め、集団自殺という形で、各人が命を終わらせるよう呼びかけたのです。
〜中略〜
ジョーンズタウンの住民で、ジョーンズの命に従わずに逃げだしたのはほんのわずか、逆らった者も2、3人だったとの報告があります。けれど生き残った人たちは言いました、910人いた住民の大多数は、自らの意志で整然と死んでいったと。』
910名ものの人々が、ジョーンズの命令で集団自殺したのです。
しかも、自らの意志で。
これを、チャルディーニ教授は、人々の不安を利用した影響力が働いたと述べています。
ジョーンズタウンの住民たちはみな北米の人間で、南米のガイアナは見知らぬ土地でした。
そこに連れてこられたの上に、ガイアナの住民からジョーンズタウンの住民たちは敵視されていたと言います。
ジョーンズタウンの住民たちは慣れぬ土地で、強烈な不安の日々を過ごしていたことでしょう。
その不安の中、自分たちの指導者たるジョーンズに自決する指示を出されたのです。
一人が毒を飲んで自殺すると、住民は次々に真似て自殺していったと言います。それが救いであると信じて。
自分で考えて、こうしたら良いと分かっていても不安でできない。
だから、他の人の言動に頼るのです。
人は不安になると正しそうなものに従おうとする。
時にはジョーンズタウンの人々のように命さえも絶つ。
私に恋愛相談をした友人は、不安になって私の言う事に頼ったのです。
冒頭の言われたことしかしない人は、同じ状態であるかもしれません。
仕事のやり方がわからず、自信が持てない。
不安だから言われるがままのことしかできない。
不安だから、優秀そうな人や上司や、周りの人の言うことをそのままやる。
考える力があるのに指示したことしかしない。
そんな人がいるなら、「さぼってんじゃねーよ」と思う前に、「何か不安に感じてることある?」と声をかけるのが一番なのです。
★終わり★