みなさんこんにちは。
爽一郎です。
人間はみな、見たいものしか見ません。
脳が、不都合なものは見えないようにしてしまうのです。
認知バイアスと言われたりするこの脳の癖。
避けることはできないのですが、自分がそうなっている、と認識できれば、対策はできます。
私自身、自分が見たいものしか見ていない、と感じた出来事が、最近ありました。
■バイアスに支配されていた自分
先日、ある研修がありました。
その研修では、あるテーマについて会議を行い、その会議風景をビデオに撮られます。
そして、会議での参加の仕方、ファシリテーションの仕方などをビデオを見ながら第三者にフィードバックされるというものです。
仕事の人との関わり合いについての改善要素をフィードバックされ、今後の自分の成長につなげるための研修でした。
そこで、私は下記のようなフィードバックを受けました。
「爽一郎さんはイニシアチブをとって会議をリードする点は評価する。
でも、話過ぎで他の人に発言を促したり、意見を聞いたりする姿勢が足りない。
他のメンバーが話辛いように見えた。」
私は確かに、ビデオで客観的に見ても一番話していました。
それは、まぎれもない事実でした。
ですが、フィードバックでは「他のメンバーが話辛いように見えた」と言われましたが、そうではないように思えたのです。
フィードバックしてくれた方は、さらにこうも言っていました。
「自分が思っている以上に、自分の意見を主張する人と話すときは、周りは話辛いと感じていると思った方がいい。
話をもっと振って意見を収集しないと、誰も本音を言ってくれなくなるよ。」
正直、その時、私はそんなことはないのでは、と思いました。
自分の場合は、みんな本音で話してくれている。
周りが話辛い雰囲気を感じることは、最近ではあまりない。
話しやすい雰囲気、というものを心掛けているからこそ、そのフィードバックを認めたくなかったのです。
そうして私は、自分の部下やチームメンバーにそれとなく聞きました。
私と話しているときに話辛くないか、と。
もちろん、メンバーは話辛いとは言いません。
それを聞いて、私は安心したのです。
が、ここで気が付きました。
自分がバイアスに支配されていると。
■信じたいものを信じ続けてしまう
ノーベル賞を受賞した心理学者、ダニエル・カーネマン教授は言います。
人には一度信じたことを揺ぎ無く信じてしまう癖があると。
カーネマン氏は、投資家の投資回収率を調査した結果、その回収率はサイコロを振るもと同じようなものであるという結論を得ました。
ですが、投資家は自分たちはプロフェッショナルであり、より高い成功率で投資を回収できると信じています。
それはなぜか、下記のように述べています。
『妥当性の錯覚とスキルの錯覚は、プロフェッショナル集団の根強い文化にも支えられている。同じ考えを持った人間の共同体に支持されているときは、どれほどばかげた考えであっても、揺るぎなく信じ続けることができるものだ。金融業界のそうした文化を考えれば、あの世界の大勢のプロフェッショナルが、自分たちは他人にはできないことができる少数の選ばれし人間だと信じていても、驚くには当たらない。』
自分にこれまで培った経験とスキルがあり、周りにそれを肯定する人々がいれば、それが真実かどうかに限らず人は自分の力を信じ、過大評価し続けてしまう。
私は、「私と話しているときに話辛い」とは言わないであろうメンバーから自分の望む答えを引き出し、ただただ安心しようとしたのです。
私は、自分が得たい結論を得るために、恣意的な答えを探したのすぎないのです。
研修でフィードバックされた内容は、きっと事実です。
実際、そのフィードバッカーはそう感じたのですから。
私は話すぎの男であり、周りに圧力を与えていたのかもしれません。
世の中には、『エコーチェンバー』なる現象があります。
Wikipediaによると、下記の定義です。
『閉鎖的空間内でのコミュニケーションを繰り返すことよって、特定の信念が増幅または強化される状況の比喩である。』
反・安倍首相の人がいたとします。
ネットの反安倍コミュニティにその人が訪れ、自分の主張が増幅され、もはや反安倍が正しいことでありそれを信じて疑わない、信念になるような状態です。
これも、人は信じたいものしか見ない結果です。
信じたいもの、見たいものを得るために、それを得られるコミュニティに参加します。
そして、ますますその考えは強化されていきます。
そんなコミュニティが無数にネット上に広がっています。
多様化し、ネットで都合の良い情報のみを得やすい状況になったため、「自分にとって不都合な情報はシャットダウン」「見たいものだけを見る」ということが容易になりました。
それは人の脳が持つ癖です。
違う意見を取り入れる、ということはその癖に抗うということなのです。
癖に抗うことは難しい。そしてその癖は完全になくすることはできません。
ですが、こういう認知バイアスがある、と認識しているかいないかは、重要です。
実際、私はこの認知バイアスの存在を知っていたことで、振り返ることができました。
偏った考え方をしない、客観的な視点を持つには、自分がどんなバイアスにかかっているかを意識したほうが良いのです。
その、偏った考え方の一つは、見たいものしか見ない、というものなのです。
抗うには、謙虚に、他人の意見を受け入れる。ただそれだけです。
★終わり★