凡人が成果を出すための習慣

残業ゼロで成果を出すには、どうしましょうか?

小説:ヒーローの管理職 第22話 メンバーの管理の章9

マネジメントについての連続小説です。

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 南部と東條が戦い始める、数分前に時間は逆のぼる。エントランスの迎撃チームは、金城が去った後、青森と黒峰の2名で襲撃者と戦っていた。
 金城が守りとして攻撃を防いでいてくれたため、それまでは連携攻撃がしやすかったが、今では敵の攻撃を避けながら戦う必要がある。
 ”前衛の攻撃回避”についてのスキルアップを青森は行っていたものの、まだまだ思うようにはいかない状態だった。そのため、攻撃にうまく転じることができず、防戦一方となっていた。
 だが、急に青森へ攻撃しようとした襲撃者が倒れた。後ろから、誰かが襲撃者に攻撃したようだ。それも、一撃で。的確で強力な攻撃で。

 ***

 時間は今に戻る。南部は東條に爆弾を向けている。
「東條。お別れだ。」
「南部…!」

「待て!!」
 そう叫びながら、私服の人間が南部へ飛び蹴りを食らわせた。
 爆弾は爆発したが、南部の手は東條の方向から逸れ、東條は無傷であった。
 赤崎だ。赤崎が助けに来た。
「…退院してオフィスに来てみたら、なんかすごいことになってるじゃないですか。」
 赤崎に助けられた東條は、少し笑って答えた。
「赤崎さん、退院おめでとうございます。申し訳ありませんが、早速任務をお願いします。」
 ギリギリであった。だが、赤崎のいない2週間を、東條は乗り越えたのだ。
 赤崎と南部が対峙する。
 南部はフルフェイスマスクを被っている。そのため、赤崎は侵入者が南部とはまだ気がついていない。
 赤崎の蹴りを受けた南部が口を開いた。
「なかなか効いたぞ…。赤崎か。立派になったな。」
 南部が赤崎に語り掛ける。
「…何者だ?」
 赤崎は自分の名前を呼ばれ、訝しむ。
 東條が正体を伝えた。
「赤崎さん、彼は南部です。」
 赤崎は驚いた顔をする。東條は続ける。
「そして、南部は”石”を狙っています!」

 通路の後ろに、青森と黒峰の2人が到着した姿が見えた。
 赤崎がエントランスの襲撃者を倒したため、青森と黒峰もこちらに加勢に来たようだ。

「増援…また時間切れか。思ったよりやるじゃないか、東條。
 北折、作戦失敗、退散だ。」
 南部がつぶやいた。
 北折と呼ばれたもう1人の侵入者とともに、南部はテレポートで消え去った。
 赤崎は混乱している様子だったため、東條はこれまでの2週間のことを説明した。とは言っても、東條もなぜ南部がこんなことをしているかは知る由もないため、説明はできなかった。

 ***

 属人化の排除により、2週間を耐えきることはできた。だが、結局は赤崎に助けられた形だ。
 元々考えていた通り、属人化の排除はこれからも続けて行く必要がある。

 "前衛の攻撃回避"についてのスキルアップを青森や紫村を始めとした、前衛を主に担うものへ。
 "後衛による死角からの攻撃"についてのスキルアップを、黒峰へ。ただ、白川と黒峰の2人だけになってしまうため、金城のマグネットマグナムを利用して、他にも死角からの汎用的な攻撃ができないか、東條は検討している。

 エノトスは予想以上に強い。南部は元ヒーローだ。それも歴代でも指折りの。そのレベルの異能者がいる組織なのだ。
 捜査班からの情報では、狼男以後に捕まえた異能犯罪者達の多くは、エノトスに関連する者達だ。ヒーローアソシエーションへの襲撃者、同時に街で異能犯罪に手を染めていた者、両方にエノトスの関連者がいたことが判明した。よって、組織的にヒーローアソシエーションへ何度も戦いを挑み、消耗戦を強いているということだ。
 捕まえた異能犯罪者から、エノトスの詳細について辿ったところ、少しわかったことがあった。コミュニティサイトに煽られてヒーローアソシエーションを襲撃した者が多いが、エノトスの中心グループとコンタクトを取っていたものもいた。襲撃の作戦や時期の指示を受けたという。状況を聞く限り、恐らくは北折と呼ばれたテレポートの異能者が、連絡役と思われる。北折、そして北折と行動を共にしている南部は、中枢に近いメンバーと考えられる。
 コミュニティサイトに扇動された者はもともと大した情報は持っていない。だが、捕まった異能犯罪者の内、北折と連絡を取っていた者は皆、頑なにエノトスのことは話そうとしない。そのため、記憶を読む捜査班の異能者が情報を探ったという。なぜそこまでエノトスという組織に人が集まるのだろうか。
 組織をまとめるもの…。東條は南部がビジョンについて話していたのを思い出した。

「異能者に非異能者は脅かされる。異能者は異能の力ゆえ非異能者に迫害される。ならば、そんなものはないほうがいい。」

 エノトスは、異能者を無くすために活動しているというのか。
 だがコミュニティサイトに書かれているのは下記の文章だ。

 ”石”を手に入れれば、とてつもない力が得られる。
 ”石”に近づけば近づくほど異能者は力を得る。
 不老不死でさえ夢じゃない。なんでも望みが叶うほどの力が欲しくないか?
 ヒーローアソシエーションは、その”石”の力を独占している。
 異能者の力を”石”で取り除く一方で、ヒーローたちだけが良い思いをしている。
 立ち上がろう同志たちよ。
 ”石”は私たちみんなのものだ。
 ヒーローアソシエーションから”石”を奪還しようではないか。

 異能の力を無くすようなことは書かれておらず、むしろ"石"を手に増幅させることを煽っている。
 南部はエノトスのコミュニティサイトの思想とは異なるということだろうか。
 ただ、少なくとも東條の掲げるビジョンとは正反対であることは確かだ。

 何にせよ、相手は強敵である。
 属人化の排除は継続的に必要だが、チーム自体のさらなる成長が必要と、東條は感じた。
 東條はノートを取り出す。

 2.メンバーの管理
  2-1.メンバーの要望/疲労状態の把握
  2-2.属人化の排除
  2-3.継続的な育成

 ”2-3.継続的な育成”。これを真剣に実施する必要がある。
 だが、具体的な実施方法が東條のメモには抜けていた。東條は、那須賀に再び教えを乞うことにした。

★つづく★